自毛植毛した髪の毛が、AGA(男性型脱毛症)の影響で抜け落ちないのか気になっている方は少なくありません。せっかく自毛植毛しても抜け落ちてしまっては意味がないため、心配するのは当たり前でしょう。
結論から申し上げると、自毛植毛した髪の毛はAGAの影響を受けにくく抜け落ちてしまう可能性は極めて低いです。移植した髪の毛が上手く定着すれば、10年後も抜け落ちずに生え続けている可能性が高いでしょう。
このコラムでは、自毛植毛した髪の毛が抜け落ちにくい理由やAGA発症のメカニズムなどをご紹介します。また、自毛植毛後にAGA治療をおすすめする理由なども説明するので、今後の参考にしてみてください。
目次
AGA発症のメカニズム
自毛植毛した髪の毛がAGAの影響を受けにくいことを理解してもらうために、まずAGA発症のメカニズムについて説明します。
男性ホルモン(テストステロン)は、5αリダクターゼという酵素によって、ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。DHTは、毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体であるアンドロゲンレセプターに結合すると、脱毛因子であるTGF-βが産生されてしまうのです。
また、髪の毛の成長には、「休止期」「成長期」「退行期」から成るヘアサイクルと呼ばれる一定の周期があります。ヘアサイクルが正常に機能することで、健全な髪の毛が保たれるのです。しかし、脱毛因子であるTGF-βが産生されると「成長期」が短くなり、髪の毛が十分育たなくなり、細くて抜けやすくなりAGAが発症するといわれています。
遺伝とAGAの関係
AGAの発症には、テストステロンや5αリダクターゼ、アンドロゲンレセプターが関係していると説明しました。健康な方なら、テストステロンや5αリダクターゼ、アンドロゲンレセプターを持っていますが、すべての人がAGAを発症しているわけではありません。
AGAの発症には、5αリダクターゼの活性度やアンドロゲンレセプターの感受性が影響します。5αリダクターゼの活性度が高く、アンドロゲンレセプターの感受性が高いほどAGAは発症しやすいのです。
5αリダクターゼは両親から引き継ぐ優性遺伝、アンドロゲンレセプターは母方からの遺伝情報です。そのため、AGAの発症は遺伝と大きく関係しています。
2種類の5αリダクターゼの分布範囲
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2種類のタイプがあります。
Ⅰ型は全身の皮脂腺に存在し、頭部では側頭部や後頭部に多く分布しています。一方、Ⅱ型は脇・ヒゲ・陰部などの毛乳頭細胞に存在し、頭部では前頭部と頭頂部に存在している酵素です。
AGA発症の原因になるのは、主にⅡ型5αリダクターゼといわれています。その理由として、AGAを発症するとⅡ型5αリダクターゼが多く分布している頭頂部や前頭部が薄くなりやすいからです。
自毛植毛した髪の毛はAGAの影響を受けにくい理由
FUTでもFUE法でも一般的に自毛植毛をするためのグラフトは、AGAが発症しにくい側頭部や後頭部の頭皮から採取します。移植部分の髪の毛は、AGAが発症しにくく薄毛になりにくいグラフト採取部位の性質を持ち続けるため、薄毛になりにくいです。
もちろん、側頭部や後頭部にもAGAが発症し、全体的に薄毛になってしまう方はいます。しかし、自毛移植する際にグラフト採取部位の髪の毛の状態を調べて、AGAが発症していないかを確認するため、移植後もAGAの影響を受けて抜け落ちてしまう可能性は低いです。
自毛移植したグラフトが上手に定着すれば、普通の髪の毛のように一度抜け落ちてもまた生えてくるヘアサイクルを繰り返すようになります。
自毛移植後に現れる一時的な抜け毛
自毛移植をしてから2~3ヶ月後に抜け毛が増える期間があります。この抜け毛は、一時的脱落やショックロスといわれる自毛植毛後に時々現れる症状で、自毛移植が失敗したわけでもAGAの影響を受けたわけでもないため、心配いりません。もし、自毛移植後に少しでも異常を感じたら、クリニックに相談して指導を受けてください。
一時的脱落
一時的脱落とは、自毛植毛手術を受けた2~3ヶ月後に、移植した部分の髪の毛が、強制的にヘアサイクルの休止期に入ることで生じる脱毛です。移植した髪の毛が上手に定着していれば放っておいても、成長期に入りまた髪の毛が生えてきます。一時的脱落が起こる原因はまだはっきりとわかっていませんが、施術時の麻酔の影響や移植部分の炎症が関係していると考えられています。
ショックロス
ショックロスとは、自毛移植手術を受けた2~3ヶ月後に、移植部分の周辺の健康な髪の毛が抜け落ちる症状です。ショックロスの原因はまだはっきりとわかっていませんが、一時的に抜け毛が増えただけのため、放っておいても1年もすれば元の状態に戻ります。
AGAの影響で抜け毛が増えてしまったのでないかと心配の方は、医師に相談してみてください。
自毛植毛後もAGAの内服治療をおすすめする理由
自毛植毛は、移植した部分に髪の毛が生えてくるようにする治療法で、施術後に投薬治療を必ず受けなければいけないということはありません。しかし、自毛植毛は、移植した部位以外の薄毛は改善できない治療法です。そのため、自毛植毛を行ったあと何もせずに放っておくと、移植した周辺部のAGAが進行してしまい、薄毛になってしまう可能性があります。
また、AGAが発症しにくい部位からグラフトを採取して移植していますが、移植部位にAGAが発症し薄毛になってしまう可能性もゼロではありません。
そのため、自毛植毛した周辺部位のAGA進行予防と移植部位のAGA発症予防のため、施術後に内服治療を受け続けることをおすすめします。
まとめ
自毛植毛した髪の毛が抜け落ちにくい理由やAGA発症のメカニズム、自毛植毛後にAGA治療をおすすめする理由をご紹介しました。
自毛植毛するために採取するグラフトは、AGAが発症しにくい部位から採取します。移植部位の髪の毛は、グラフト採取部位の特徴を持ち続けるため薄毛になりにくいです。
しかし、植毛後の薄毛リスクを軽減するために、植毛後もAGAの内服治療を受け続けることをおすすめします。
薄毛についてお悩みの方は、どんなことでもよいので当院にお気軽にご相談ください。